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織田信長が、ある有名な料理人を抱へた所が、始めて、其料理人の拵(こしら)へたものを食(く)つて見ると頗(すこぶ)る不味(まづ)かつたんで、大変小言(こごと)を云つたさうだ。料理人の方では最上の料理を食(く)はして、叱(しか)られたものだから、其次(そのつぎ)からは二流もしくは三流の料理を主人(しゆじん)にあてがつて、始終褒(ほ)められたさうだ。此料理人を見給へ。生活の為(ため)に働らく事は抜目(ぬけめ)のない男だらうが、自分の技芸たる料理其物のために働(はた)らく点から云へば、頗る不誠実ぢやないか、堕落料理人ぢやないか